約 85,632 件
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/124.html
第一回戦【海水浴場】SSその2 蛭神サソリは憂鬱に悩まされていた。 サソリは挌闘家であった。やはり、挌闘家である以上自らの実力を知らしめたかった。しかし 、その目標にはいくつもの壁が立ちふさがっていた。 まず、彼が魔人であること。この時点でこの世の90%の挌闘家とは立ち会えぬ、立ち会っても意 味のないことが明白になってしまっている。 次に、彼が蛭神家の魔人であること。サキュバスやインキュバスの家系、淫魔人である蛭神家 というだけで多くの魔人が彼と立ち会おうとしなくなる。つまり、寝技をかけられた時どんな淫 術が炸裂するか、想像したくもない。しかも、筋肉隆々の男から。 さいごに、彼の戦闘スタイルに問題があった。彼の挌闘家としての正装は全裸。そして、その スタイルは【五身一体】。この五身とは、右腕・右脚・左手・左足。そして、男性器。なんというこ とだろうか、男性器に常軌を逸した強度を持たせる魔人能力蛇神鞭を中心に添えたスタイル。 もはや、このような男と戦いたいという猛者はほとんどおらず、やはり同じように表舞台から 追放されし外道挌闘家と仕合をする虚しき日々を蛭神サソリは送っていた。 だが、彼の人生は一辺する。なんと魔人同士を集めた武術大会に招かれたのだ。尤も、これは 蛭神家代表の他の選手が核ミサイル投下のゴタゴタで行方不明となり、他に候補を探したときに タイマンで戦車を撃破したサソリが仕方なく選ばれたのだが、サソリにとってはどうでもいいこ とだった。蛭神家がサソリの出場決定と同時に大会から手を引いたとしても。 自らの力を思う存分に発揮し、それを世間に認めてもらえるという機会にサソリの股間は図ら ずも興奮し、文字道理赤熱していた、はずだった。 「小男、チンピラ、女子・・・か」 そこにいたのは戦車さえも破壊可能な彼にとって思わず溜息が出てしまうような面子であった 。無論、彼らも魔人であるのだから見た目で判断すべきでないことぐらい、頭は愚鈍と一族から 笑われてきた彼でも重々承知である。が、その魔人がどのようなタイプであるかは容姿を見れば だいたい分かる。つまり、筋肉が発達していれば鍛錬のすえに超人的膂力を得た魔人であったり 、そのような肉体を得ることが能力の一部であったりするし、そのような魔人は概して肉体派で ある。逆に細いシルエットをもつならば、肉体に頼らず能力に特化した魔人が多い。もちろん、 細指一本で大男の全力の正拳突きを悠々受け止めるような能力の発現をするものもいるが。 とにかく、サソリは肉と肉が激しくぶつかり合う戦いを望んでいたのに、恐らく目の前にいる 魔人達は能力特化なのだ。全くなんと星の巡り合わせが悪いことか。 「が、手を抜くわけにもいかぬ。どれ一つ振って見るか」 その丸太にも例えられる四肢、いや五肢がゆっくりと動きだした。 「なんなんだ、あれは」 遠藤終赤は戸惑っていた。いきなり放り出された海水浴場。そして、明らかに堅気でない男二 人組はいいとしよう。このような職種の人間と逢うのは職業柄珍しくない。だが、もう一人の男 、あの一糸纏わぬ。あれはなんだ。遠藤終赤が男性器を見るのは初めてでない。小さい頃は父親 や叔父と一緒にお風呂に入ったこともあったし、叔父の蔵書である古今東西の探偵小説また探偵 教科書には色事が、挿絵付きで、描かれていることも少なからずあった。ので、彼女は男のソレ に関する知識は同年代の女子よりもあると自負しているし、実際に親族以外のソレをみても、マ ァ、上手く処理できるだろうと思っていた。しかし、あれはなんだ。 コーラのペットボトル、いや、田舎に突っ立て居る黒ずんだ木製電柱を思いださせるそれが、 こちらに向かってくるではないか。さすがにこれには歴戦の探偵、遠藤終赤も困惑せざるおえな い。 ("電柱"から見える手足の太さ!奴(やっこ)は格闘系魔人と見える。さらに排泄器の機能とする排 尿や射精を行わないところを見ると、アレ自身を武器にするというのか!) と、思考をしたはいいが、もはや"電柱"は目の前で振りかぶられようとしていた。 「ッッッ!!」 魔人の脚力を持ってして、100mはあった間合いを数秒でつめたサソリ、そして自分の一物をも って目の前の女子を叩き潰そうとした刹那、その女がこちらに向かって指を向けるのをサソリは 見逃さなかった。回避!瞬間、桜色の閃光が左目をかすめる! (光学能力か!) 指の先や手のひらからエネルギーを放出する魔人能力者は珍しくなかったし、立ち会ったこと もあった。しかし、彼らはもっと遠距離からエネルギーを打ち込んできた。今、彼は己の男性器 を振りかぶろうとしたために、己のソレで視界が塞がれ、体勢的にも回避は困難。もし、目の前 の彼女がこれを狙ってやったのなら、なかなかどうしてやり手ではないか! 「くく、少しはァ、楽しめそうだなぁ!」 サソリは回避体勢から一気に男性器を砂場に叩きつける。目くらましのためだ。 が、次の瞬間には深さ2mほどの大穴が地面で口を開いていた! 「何・・・だと・・・!?」 まさか女の戦略かと思い、顔をそちらに向けると女もぽかんとしている。となると、あのチン ピラと小男の組が! 「うおおおおおおおおおおおおあおおおおおおお!!!」 いや、仮にそうでももはや彼らは墜ちるしかなかったのである。物理的にも肉体的も。なぜな ら、落とし穴には夜魔口砂男の眠り砂がたっぷり詰まっているし、まあ、起きていても上から窒 息させる勢いで眠り砂がかけられるからだ。 「いやァ、相手が真っ先にこっちに来なくて良かったですねぇ」 「まったくやな」 サソリが遠藤に向かった直後、夜魔口赤帽は大量の真紅の液体を砂男に呑ませたのだ。その摂 取量は効果が切れると同時に全身の疲労で即死するレベルであったが、この大会の特殊性を考慮 した一種の作戦であった。そうして、ありえないほど強化された砂男は地面に潜り、即席の落と し穴、もちろん自分の能力でつくった砂を混ぜたものを、をつくったわけだ。もし相手達がこち らを先に狙っても、砂男が砂の結界を作ってしまえばこちらは籠城戦に持ち込める。そうなれば 、やはり残ったもの同士は潰しあうだろう。結局のところ、海水浴場が舞台になった時点で自分 達が圧倒的有利な立場にいるのである。 「げほっ」 早くも強化の反動が現れだした砂男が血を吐き出した。赤帽はそれを心配そうに見守る。 「すまんなぁ、もしかしたら、あと数回死んでもらうかもしれん」 「かまいやしませんよ、それでおやっさんが助かるならァ・・・げほっ」 砂男の全身が震えている。皮膚がひび割れ血が噴出している。あの治療担当魔人の力は参加す る前に十分見せてもらったが、それでも不安になる。治療が、ではなくてこの舎弟の心が果たし て決勝まで持つのかと。いや持ってもらわなければならない。 砂男が静かに砂浜に横たわる。もはや、息を、いや心臓自体が破れたのかも知れない。 「おやっさん、待っててくだせぇ」 赤帽は一人静かにつぶやいた。自分以外の、全てが眠った砂浜に、その声は波にさらわれたか のように、消えていった。 『夜魔口赤帽&夜魔口砂男』WIN! このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/tokimeki_dictionary/pages/234.html
Central park 中央公園【ちゅうおうこうえん】 『1』『2』『4』に登場するデートスポットの一つ。 『2』『4』では最初から行けるが、『1』では1年目の夏以降に登場し、なおかつ情報誌を確認しないと行く事が出来ない。 ちなみに、『1』では「きらめき中央公園」・『2』では「ひびきの中央公園」が正式名称だが、ここで一括して解説する。 なお、『3』には丘の上公園が、GSシリーズには森林公園・臨海公園が存在する。 概要 数あるデートスポットの中でも、遊園地やショッピング街と並んで特にメジャーなスポットと言える場所だろう。 実際にかなり多くのイベントが発生する上、ここが好きだというキャラも多い。 ほとんどのキャラに対応できる無難で誘い易いデートスポットとも言えるが、ワガママ者の早乙女優美や伊集院メイ、賑やかな場所を好む朝日奈夕子のようにここを嫌っているキャラも一定数いる。 中央公園=爆弾処理場(物騒な表現ではあるが…)と考えがちだが、この場所は好感度が上がりやすいキャラが多いので、爆弾を処理するだけなら、『1』では近所の公園を、『2』『4』なら河川敷公園を使った方が良い。 『1』 基本的に並木道と池の2ヶ所を交互に回る形になるが、毎年3月15日~4月中までは花見の期間になる。 本作には、一部のイベントを除いて天気の概念が無いため、期間内であれば誰でも気軽に誘うことができる。 現実でもこれだけ長期間咲いていてくれると、無茶な(場所取り含む)花見はだいぶ減ってくれそうな感じはする。 本作では、およそ半数のキャラがこのスポットを好むため、他のスポットの谷間に利用する事が多いだろう。 特に、藤崎詩織はここと近所の公園の両方を好む大の公園好きな上、イベントも用意されているので終盤までお世話になるはず。 デート中の三択も相手が詩織に限らず、雰囲気を優先したり、相手を気遣うものを選べば、ほぼ間違いなく好感度を上げられる。 『2』 並木道と噴水広場の2ヶ所を交互で行く事になる。 毎年3月15日~4月15日が花見の期間となり、雨が降ると花見はできないが、代わりに通常のデートは出来る。 2000年3月19日や2001年3月18日は、部活の練習試合があるため雨天にはならない仕様なので、主人公・誘いたいキャラの2人とも運動部でない場合や、2001年4月8日は八重花桜梨のイベントの関係で本人が未登場(退学後)でも必ず晴れるので、当日の天気が未確定のうちに誘っても大丈夫である。(詳細は天気の項を参照のこと) ここでデートをする場合、前日が雪で当日が晴れ又は曇りだと、入口・並木道・噴水広場のいずれも雪が降り積もっている。 また、声は聞こえるが画面上には他の人がいなくなるので、2人っきりになった気分になれる(アルバムにもその状態で記録される)。 特に、並木道は一面の雪景色となるので「冬のソ○タ」のワンシーンを彷彿とさせる。 あとは、陽ノ下光と2001年の3月下旬から4月上旬までにここでデートをした時に、サイクリングのイベントが発生する。 おそらく、ひびきの市は首都圏の設定なのだろうが、この時期にあの格好で寒くないのだろうか? 近年は温暖化が続いている影響で、この時期でも最高気温25℃以上30℃未満の夏日になることは珍しくないが、当時でも昼間は20℃前半の日は割りと多かったので、特に問題は無いということだろう。 中央公園の場所は、地図によるとひびきの市の南西部の外れである。 どこが「中央」公園なのかという気がするが、そのあたりを気にしてはいけない。 他のデートスポットでは、タワー・スケート場も近所にある。 本作における大事な注意点として、中央公園でのデートは現地集合ではあるが、扱いとしては伊集院大橋で待ち合わせているという事になる。 各デートスポットではなく、そのスポットがあるエリアで判定されるため、前後のデートの待ち合わせ場所が伊集院大橋だと不良戦が発生してしまうので気を付けよう。 『4』 夏は噴水、それ以外の時期は並木道となる。 それ以外では、1年目・2年目の春休みにボランティアが行われる。参加すると、パラメータがわずかに上がるうえに、参加した女性キャラの好感度が少し上がり、何故か傷心度も下がるので、特に本命でない状態の星川真希や皐月優が参加する際は、主人公も参加させた方が良いだろう。 その他 やはり、公園といえば青春・恋愛には付きものなのだろう。 晴れた日にベンチや芝生に座ってお互いに語らう姿は、リアルでもゲームでも憧れのシチュエーションと言えるのではなかろうか。 公園を好きな女子が一定数いるという事は、心の中に「いつか好きな人と公園で同じ時を過ごしてみたい」との願望を抱いているからなのかもしれない。 このスポットでデートイベントが発生するキャラ 『1』:藤崎詩織・虹野沙希・古式ゆかり・美樹原愛・早乙女優美・館林見晴 『2』:陽ノ下光・八重花桜梨・佐倉楓子 『4』:星川真希・語堂つぐみ・郡山知姫・柳冨美子・エリサ・D・鳴瀬 (イベントの発生条件等の詳細は、各キャラの攻略の項を参照) 関連項目 地名・デートスポット 近所の公園 河川敷公園 丘の上公園 森林公園 臨海公園
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/433.html
逆転のエイテルオン・SS 連続SS 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 DBへ SS保管庫へ戻る
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/185.html
第二回戦【城】SSその2 「現場の物証」 ひとつ。 「被害者の証言」 またひとつ。 「そして貴公は今、うまい棒ではなく『キャベツ太郎』を購入し」 ひとつ、ひとつ。相手を追い詰めるように。 「私のガイルを相手に『ザンギエフ』を選択した……それが答えです」 彼は人差し指を立てた右手を持ち上げ、そして―― 「即ち、」 ――つきつける。 「犯人は……貴方だ」 指先から桜色の光が迸る。相手の男は倒れ、それきり沈黙した。 後に終赤の叔父となる探偵、遠藤終助による鮮やかな推理の終焉であった。 伏線を積み上げたとき、探偵は無敵だ。相手の男も相当な使い手であったようだが、 最後には抵抗すらできず事件はQEDを迎えた。 周囲の観衆は拍手とともにその手腕を称え、喝采する。 事件が解決しなければ、ずっとこの孤島に閉じ込められる展開であったのだ。 彼らは終助と、『キャベツ太郎』をたまたま置いていた孤島の駄菓子屋を尊敬した。 皆でサクサクと『キャベツ太郎』を味わいながら、「その少女」も目を輝かせた。 探偵って、カッコイイ。 あと、ガイルはザンギエフより強い。 少女の胸には、「探偵・遠藤」と「サマーソルトキック」への強い憧れが 残り続けたのである。 それから何年が経とうとも。ずっと、ずっと―― ◆ 埼玉県、西川口。 ネオン眩しいこの歓楽街にそびえる城が、今回の戦いの舞台となる。 周囲の風俗店や案内所を押しのけて建つ、その建築物の名は「ホテル不夜城」。 実際「まるでお城みたい」と形容されるほどの立派な城である。 お堀みたいな池や、石垣を模した土台まであるほどの凝りようだ。 誰がどう見てもお城である。運営の解説に偽りなし! ここは普段ひっきりなしにカップルが往来する人気スポットだが、 本日に限っては入り口に見える男女は……ただ一組のみである。 見た目には華やかな顔面を持つ美男美女のペアであったが、その雰囲気は異様だった。 「ウェーーーーイwwww」 「ヒヒヒヒヒヒヒwwww」 男の名は黄樺地セニオ、女の名は紅蓮寺工藤といった。 あまりにもでかい声だ。清々しいほど中身の無い、ただの叫び声。 まるで動物が鳴くかのごとく二者は繰り返す。 「ホテルガチデ!? マジデ!?」 「キャハハハハ何コイツ外国人? 何言ってんのかわっかんねー!」 「イキナリOK? ナマ? やっべテンション上がってきたんだけどwww」 二人は小刻みに跳び上がり、そわそわと震えた。 「ウェーイ!」「ウェーイ!」 そして両手を打ち鳴らしてハイタッチ。 まるで誰かがボーリングでストライクを取りスコア置いてかれて俺ガチヤベー時 のような盛り上がりである! 会話は一切成立していないが、テンションは共有されていた。 カラオケで知らない曲を入れられても、適当にタンバリン振って合いの手を叫べば 今日もキミかわウィーSHOW☆TIMEソレソレソレソレだからである。 「チョイチョーイ! やっべマジマブだって。いンだよね? 俺いっちゃうよ? マジよお、ビリッときたんだけどコレ間違いなさすぎてDoよ」 「ヒヒヒ、オウなんだかわかんねーけどいったれいったれ!」 工藤と対面した瞬間、セニオの背景には電流が奔った。 それはもうビリッときたハズだ。「創作の祭典」とはそういう能力なのだから。 そしてビリッとくれば、目先の女に踊らされやすいチャラ男が何か勘違いしたとしても 無理からぬ事であろう。チャラ男のよく聞くJPOPでは、こんなフレーズが多用される。 ――『キミこそ運命の人』。 なおフィクションがどうとかは、彼にはわからない。難しすぎる。 セニオは目の前の女子とアゲアゲする事と、ホテルガチデの事しか考えていない! 「ウェーーイwww」「ウェーーイwww」 二人は再びハイタッチをかます! 「「ウェイ」」 右腕をぶつけ合い、 「「ウェイ」」 左腕をぶつけ合い、 「「ウウウウェエーーーーーーイwwwwwwww」」 互いの脇腹をくすぐる! 「ウェエーイw」「ウェエーイw」 セニオが跳びあがる。工藤も跳び上がる。 「ウェッヘヘーーーイww」 そして工藤はくるりと背後を向くと、全力で走り去った。 「ウェイ?w」 半笑いで見送るセニオ。その脇腹には、クリップで留められた球体が。直後! ボムウェイ、と短い音がした。 チャラ男の肌が日サロ仕様・夏ナンパモードへと変じ、髪は一瞬にしてパーマされる。 全身を灼かれたセニオはその場に倒れた。爆弾である。 「ガ……ガチデ…………?」 「ヒッヒヒ! ごっめーん、ガチだ!」 工藤はそのまま逃げ、すぐに姿が見えなくなった。 「ガチ……ホテルガチデ」 セニオはゆらりと立ち上がった。 ◆ ――「ホテル不夜城」302号室、SMの間! 壁面にかかる鞭、ロウソク、ギャグボール、縄、革ベルト他拘束具。 それらを視界に認めてしまった14歳の遠藤終赤は、思わず呟く。 「……間違って、拷問博物館に来てしまったのでしょうか」 お嬢さんそれは違うのだ。拷問博物館にある器具は相手を苦しませるためのもの。 しかしここにあるのは……相手を悦ばせるためのモノなのだ。 叔父の塾で探偵の心得ばかり叩き込まれてきた、うぶな少女には難しかっただろうか。 ともあれ、遠藤は平常通りの試合運びで既に「準備」を開始していた。 ここにいる遠藤の厚みは3センチほど。偵察用のコピーだ。本体は別にいた。 薄い身体の少女は周囲を警戒する。 やがて、すぐに遠藤の探偵聴覚は足音を感知した。近い。 一人か。城の入り口を確認した時点では二人連れ立っていた筈だが、何かあったか。 そして足音はドアの前に到達し、そのままドアは引き開けられた。 遠藤は見た。花柄ワンピースの美女、焦点の合わない瞳。彼女が紅蓮寺工藤か。 直後、遠藤の後頭部を雷が襲う。 これが「創作の祭典」! 確かにこのシーンは一回戦でも見た。 なるほど肉体への損傷はない。いかなる能力なのか? 遠藤は考えるが、 続けて彼女はすぐに理解した。――フィクション。世界が物語である事。 だが遠藤は怯まない。あくまで冷静に、それらの事実を探偵思考回路で、すぐさま考察。 そして結論は出た。探偵にとっては同じだ。すべき事は変わらない。 探偵に求められるのは、純度。遠藤の考えではそうである。 伏線を張り、犯人を確定し、光線を当てる。それだ。 これが現実でなく、物語の探偵であるというならば、なおさらである。 フィクション上の探偵は完璧で完全でなければならない。 遠藤は侵入してきた工藤の動向に注目した。さあ何をしてくる。 工藤は遠藤を一瞥すらせず、一直線に部屋の奥を目指す。気付いていないのか? そして部屋に置かれたものものしいベッドの脇から、ある機械を取り出し、 「ヒヒ……ヒヒヒ! やっぱりあったゼ」 カチリ、とスイッチを入れた! ヴヴ……ヴヴヴ。棒状の機械が振動する。 遠藤はどうしていいかわからず硬直する。緊張の時間。そして、工藤は。 その機械をスカートの中に入れて―― ダメだこいつ何も変わっちゃいねえ! 工藤の息づかいが部屋に響く。 「これは……いったい何の『伏線』でしょうか……」 探偵発言ともメタ発言とも取れる困惑を遠藤が思わず口にする。 それは工藤の耳にも入った。工藤の首から上が、ぎょろりと動いた。 「アー……? 人がいたのかヨ。おれは紅蓮寺工藤……オマエは、確か?」 「拙は遠藤終赤。探偵です」 二人はついに言葉を交わす。 何気ない平然とした名乗りだった。軽い挨拶だった。問題はないだろう。 ――ただし。 それが相手を過剰に刺激するという結果は、さしもの探偵も予想できなかった。 「探偵……エン……ドウ……?」 工藤の眼が赤く充血し、瞳孔が開き、口元だけがなぜか嗤った。 ボトリと、手にしていたマッサージ機を取り落とす。振動がおさまらず機械は床で踊る。 工藤は、空いた手を懐に差し入れて拳銃を取り出す。常に携帯している弾のない銃。 いつも通り、銃口をこめかみに押し付けた。強く強く、頭がえぐれそうなほどに。 ギャラ……ギャラ……ギャラギャラギャラギャラギャラギャラギャラギャラギャラ リボルバーを回す。 「ヒ……ヒヒ……」 声が漏れる。 「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒャッヒャヒャヒヒヒ!!!」 工藤は肩を震わせながら遠藤のほうを向いて立った。 「オマエお前……なんでその姿、でも関係ねえ、おれは……おれは! お前を殺したくて殺したくて、愛しちゃってンだからよおおお…………!」 光を放ちそうなほど剛い眼差し。彼女の心のドス黒さが外気にまで漏れている かのようだ。墨絵のような瘴気が工藤を覆っている。大きな大きな殺意が見えた。 「探偵エンドウ」の名が、何らかのスイッチを押してしまったようだった。 遠藤は気を張りつめる。臨戦態勢。このまま戦う気か。 工藤はじり、と一歩後ろに下がりながら遠藤を睨む。 一見感情に支配されているようで、なんと冷静な奴だろう。と遠藤は思った。 必殺の推理光線「一ツ勝」、射程は1メートル。その範囲外で戦うつもりなのか。 という推理が、すでに罠にかかっている。 一歩下がったその足で、工藤は大きく床を蹴る。急接近! 「頭の良い人間の思考のほうが読み易い」。工藤の信条だ。遠藤は隙をつかれる。 あっという間に鼻先に工藤の姿が迫る。 「ハアァ~~ッ。捕まえたぜェェ」 殺意で荒げた息が、遠藤の首筋にかかった。 工藤は銃のグリップで相手を殴ろうと振りかぶる。 一回戦のように火薬銃で一撃で決める、などという事はしない。もったいない。 「探偵エンドウ」から受けた屈辱の数々が彼女の脳裏をメリーゴーランドした。 偵察用ポストイット分身である今の遠藤は、腕力が無に等しい。不利か? まずい、と遠藤は一瞬だけ思ったが――いや! いくら敵の術中だろうが、近距離ならば使えるではないか! 「一ツ勝」! 遠藤は工藤に殴られる前に指先を出し、狙う。発射。桜色の光が迸る。 しかし工藤は首を大きく傾けて回避! 体勢が崩れた。遠藤も工藤のくりだした打撃をかわす。チャンスだ。再び推理光線! しかし工藤は床を転がって回避! そのまま蹴りを繰り出す。 蹴りは遠藤の探偵帽をかすめる。問題ない。さらに推理光線! だがかわされる。 攻防は次々に入れ替わる。 工藤、遠藤、工藤、遠藤、工藤、工藤、遠藤! 工藤、遠藤、工藤、遠藤、工藤、遠藤、遠藤! おお、なんとリズミカル。これぞまさに「声に出して読みたいSS」ではないか! 工藤、遠藤、工藤、遠藤、工藤、工藤、遠藤! 遠藤、工藤、遠藤、工藤、遠藤、工藤、工藤! そうそう、その調子! ハイあとちょっと! 工藤、遠藤、工藤、工藤、工藤、遠藤、遠藤、工藤。遠藤! 遠藤! 遠藤! 乱戦の末、転がる二人は部屋に置かれた容器をひっくり返した。ローションだ。 粘性のある液体がふたつの女体に降りそそぐ。ベトベトだ。だが両者は怯まない。 遠藤、工藤、工藤、遠藤、工藤、遠藤、遠藤、工藤、遠藤! 工藤! 工藤! 「ハァーッ。ハァーッ。ヒ、ヒヒ」 「はぁ、はぁ……」 全身をぐっしょりと濡らしながら、再び立ち上がった二人は対峙した。 ワンピースを透けさせ、胸や腰のラインを浮かばせた工藤が殺意に目を血走らせている。 そして同じく濡れた遠藤は、若干困惑していた。推理光線が、当たらない。 何発撃っても当たらない。光線は光速。通常ありえないことだ。 しかしそれは必然であったのだ。 ――フィクションの呪縛。 ここまで何の伏線もなく、事件を起こしてもいない工藤を、探偵が裁く要素がなかった。 この戦いが「物語」である以上、犯人でない者を指名する「推理」は……ない。 厚さ3センチの肉体でこれ以上は戦えない。潮時か。遠藤が静かに計算を終えたその時。 「SMの間」の入り口の扉に、新たな人影が現れていた。 「ちょっ……www女の子たちだけで先にパーリィとかヒドくねww」 ◆ 少女……いや、既に立派な大人にまで成長したその女性は、 画面に張り付くようにしてその戦闘を見守っていた。 戦っている片方は、彼女もよく知る紅蓮寺工藤そのもの。そしてもう一方は。 一回戦の試合を見た時、惹きつけられた。古典的な探偵スタイルの服装。 そして指先から放たれる桜色の推理。その儚く美しい色に彼女は見覚えがあった。 大会パンフレットの選手一覧に目を落とす。そこには確かに書かれていた。 「遠藤」という、彼女の憧れた人の苗字が。 まさかあの工藤と当たるなんて、というのが彼女の正直な気持ちだった。 試合を見る目にも、自然と力がこもる。どちらが勝つのだろう。できれば遠藤に―― その時、彼女の背中にピリリ、とひとすじの電流が走った。 ◆ 小型爆弾一発では、セニオを無力化するには不十分であったらしい。 キャラ設定なんぞを見てみると彼のFSは0、防御と体力は合わせて14もあるそうだ。 ダンゲロスというゲームに当てはめて考えるならば、魔人としてもタフな部類だろう。 彼の肌は焼け焦げ、ところどころ流血もしているが、そのニヤケ顔は崩れていない。 「ったくクドウちゃんよーゥ、シャワー先浴びるならマジ言ってくれし! 置いてかれるとかマジねーわwwwでも女の子増えてるしww3Pパネェww これキテルんじゃね?wwシューカちゃん、チュリッス!」 チャラ男は工藤の爆撃を恨むそぶりも見せず、女子の増員を喜んだ。 14歳は彼のストライクゾーンからは外れているが、それはともかくとして とりあえずウェーイしてしまうのがチャラ男文化である。 「見ろよオレ今日マジイケてるっしょwwなんか焼けてっしパーマとかww あとよオ……新しいアソビも覚えたっつーかア?」 セニオが右手の指を掲げる。……何だ? 反射的に女子二人は身構える。 「『セット』ォ! 『フィクション・ファンクショーン』ってかww」 セニオが宣言する。先ほど受けた「創作の祭典」のコピー。 なんだ、と遠藤・工藤は少し安堵した。あれは複製して意味のある類の能力ではない。 セニオは相手に雷を落として驚かすだけの能力と思っているのかもしれないが。 既にこの場の三人は「真実」を知っているため何も変わらない筈……である。 ところが。 一瞬で落ちるはずの雷は落下せず、ビリビリと音を立てて頭上に渦巻いた。 そのままどんどん太く、大きくなってゆく。増幅されている? 工藤にも、その現象は理解できない。「……ア?」と見上げるばかりだ。 そして、カッ、と閃光が部屋中を貫いて、セニオが雷の渦に飲み込まれた。 「こ、これは……?」 咄嗟に腕で眼をかばいながら、遠藤が困惑する。 「ヒヒッ……オイオイ、知らねえぞ何だこれオイ」 工藤は半笑いで、まるで人事のように見守る。 「ウェイウェーイwwちょっまぶしッつのwwなー俺スゴくねwヤバくねww」 苛烈な光の束を浴びながら、セニオがいつも通りの軽薄な言葉を吐く。 その体から、パリリ、といかずちの弾ける音がした。すると。 「「うんステキ♪」」 二人の女子は、セニオの両腕にそれぞれ抱きついた。 ◆ 「創作の祭典」はそもそも、紅蓮寺工藤の能力ではない。 読者の皆様におかれましてはキャラ設定のページをあらためて確認して頂ければ おわかりの事と思いますが、そうなのだ。 「創作の祭典」は小説「アンノウンエージェント」の作者である女性の能力だ。 工藤を誕生させたのもこの能力なら、対戦相手にこの世界がフィクションだと 悟らせたのもこの能力である。 「フィクションの世界から登場人物を召喚する」 「自分が物語の登場人物である事を悟らせる」 まるで二つの能力があるかのように見えるが、しかし実態は違う。 本来「創作の祭典」の効果は一つしかないのだ。 「フィクションの世界と外部世界を繋ぐ」 これが元々、その女性が持っている能力だ。 物語の世界から紅蓮寺工藤が召喚されてきたり、その周囲の人物が フィクション世界と作者世界の繋がりを認識したりするのは全て副次効果と言える。 そしてその、世界と世界を繋ぐLANケーブルのような役割を果たしているのが ――雷である。 能力発動時には、必ず雷が落ちる。その瞬間、光ファイバー回線を超える速度で さまざまな情報がこの世界に入り込んでくるのだ。雷という光の線を通じて。 それが、「創作の祭典」の全貌である。 世界そのものに干渉する巨大な能力であるため、能力者本人にも制御がきかない 厄介な能力でもある。何が起きるかは、使ってみるまでわからないのだ。 彼女はただ……憧れの探偵にもう一度会いたいだけだったのだが。 そのために、小説まで書いたのだ。 そして今、「創作の祭典」は今までになく出力を増大させていた。能力の暴走だ。 「探偵・遠藤」の存在を見た彼女(術者)が動揺し、 試合に過度に注目したせいだろうか。今や彼女の体も雷に覆われていた。 彼女にできるのは、手に汗を握って見守る事だけだ。 ◆ ――「ホテル不夜城」天守閣、スイートの間! ワンフロア全体をこの部屋が占める、豪華な大部屋である。 広い窓からはネオン瞬く歓楽街が一望できる。 バスルームはそこそこ広いし泡風呂にもなる。シャワーの水圧も強めで快適。 しかもこのバスルームはガラス張りなので外から丸見えで色々捗る。 そして中央に陣取るのは、なぜか回転できる巨大なベッドである。 そのベッドに鎮座まします男……黄樺地セニオは、もはや無敵であった。 彼の体は金色に輝くオーラに包まれている。オーラは天井に向けて伸び、 屋根をも越えて上昇していた。オーラが軽薄なのだ。比重も空気より軽い。 彼の表情は安楽に満ち、心は平安に満ちていた。世界平和が今ここにある。 時折、体のあちこちで電気的火花がバチバチと爆ぜた。雷の成分だ。 セニオが浴びた雷は、通常の「創作の祭典」のそれだけではない。 彼は工藤との初対面時に既に一度は雷を受けているわけだが、 自分でコピーしてさらにもう一度。つまり二倍。 しかもコピー時の雷は術者の注目により増幅されていた。さらに倍! つまり総合的に計算すると、セニオはおよそ108倍ものフィクションエネルギーを 浴びた事になるのだ。前例のない事である。 帯電した雷によってあらゆる外部世界と接続された彼は、秒速でテラバイト単位の チャラ男情報をその身に受けていた。ほとんどチャラのイデアと化している。 限りなくフィクションに近い、チャラ男を超えしチャラ男の誕生である。 ――《セニオ・マジゴッド》。 その究極チャラ存在をここではそう呼ぶ事にしよう。 彼のオーラはフェロモンと混ざり合い、女性をコンパからホテルに導くエスコート値が 通常の5万倍を記録していた。計測器の針が振り切れて吹き飛びベッドインするレベル。 セニオ・マジゴッドは巨大回転ベッドにダラリと横になり、その両脇には、ああ、 遠藤終赤と紅蓮寺工藤が、一糸まとわぬ姿で、はべっているではないか! 「ヒヒ、ヒ……何だコレうっとりするぜェ……」 見た目だけは美人な工藤が推定Cカップをセニオ・マジゴッドの腕に押しつけ、 「拙は……拙は、このような感情は、はじめてです……」 顔を赤らめた14歳の遠藤がセニオ・マジゴッドの体にほおずりする! なんたる未成年猥褻! ずるい! そこ代われ! 「ウウウェエェーーーーーーイwwヒュウー、今日はいいじゃんイイじゃん ノッてるじゃん♪ もっと女のコ集めてPARTY★NIGHTしちゃウゥー?」 セニオ・マジゴッドがパチンと指を鳴らすとホテルの窓がひとりでに開き、 そこからネコ、いぬ、ハト、鮭、クマ、パンダなどが次々と入ってきた。 無論すべてメスである。その新歓パワーは留まるところを知らない! しかし平和は長くは続かなかった。 「ウェイウェイウェイウェイww」 「素敵と存じます、セニオさま……」 「あァー……おれも、そう思うぜえ…………だが、」 工藤はセニオ・マジゴッドの二の腕をぺろりと舐めてから、 「お前は邪魔だなア……エンドウ?」 それはハーレムの常、嫉妬と憎悪による骨肉の争い。 工藤がベッドのむこうに何か球体をほうり投げる。――爆弾! 小型だが爆発すれば、倒れてきた家具が遠藤の薄い身体を押し潰すだろう。 マジゴッドに心酔していた遠藤は反応が遅れ…… BOMB ――という音を、「ホテル外壁で待機していた遠藤」は聞いた。 偵察に送っていたポストイット分身ではない。肉体に厚みをもつ本命だ。 ポストイット化した体の粘着力を利用し、外壁に貼りついている。 その遠藤は爆発を待っていた。中で何が起きているか知らないが、 紅蓮寺工藤なら必ず爆弾を使うはずだ。爆発に0秒で反応するために耳をすませた。 そして、時は来た。彼女はとっておきのタイミングで、能力を発動する。 『スマート・ポスト・イット』 べろり、と何かが剥がれる音がした。 そして轟音。 ホテル内の分身遠藤は、部屋が急に狭くなった事を認識して、ふっと笑った。 「自分」はうまくやってくれたようだ。そのまま、倒れてきた棚に潰されて死んだ。 工藤も認識した。部屋の大きさが半分以下になっている。 そして先ほどの爆発によって建物全体が軋み、崩れ始めている。轟音が止まない。 そんなばかな。柱の一本すら破壊できない小型爆弾のはずである。 スマート・ポスト・イット。 遠藤は、「ホテルの建物全体」をポストイット化して分割したのだ。 ポストイット化された物体の強度は、その厚みに比例する。 今やこの建物の強度は巨大なダンボールハウスにすぎない。このまま瓦礫と化すだろう。 探偵の、大胆な一手であった。 セニオ・マジゴッドですら、こればかりはどうにもならない。 やがて床が抜け、マジゴッドと工藤は中空に投げ出された。最上階だ。地面が遠い。 「ヒヒ……面白え、事を……しやがる……!」 「ウェウェ……ウェエエエエエ~~~~~~イ???」 すでに全裸であった工藤は、脱いであった自分の服に手を伸ばす。届くか? マジゴッドはオーラを輝かせたまま、空中でばたつく。 そのまま、二者は崩落に飲み込まれた……。 ◆ 敷地に積もった瓦礫の山。それを横で眺めたたずむ、遠藤終赤。 中の「三人」が死亡していればそのまま勝利だ。対戦相手の動きはない。 遠藤は試合終了のアナウンスを待った。 「ヒ……」 ――いや。微かな声。 見ると、瓦礫の中で裸の紅蓮寺工藤が、脱いだ服で頭部を守りうずくまっていた。 全身傷だらけであちこち骨も折れているだろうが、命だけは助かった形だ。 ギリギリで知恵の働く女である。 セニオの声はない。マジゴッドは、世界平和を体感したまま意識を手放していた。 「ヒヒッ……」 工藤が消えそうな声でうめく。 ほっておいても死にそうだが、遠藤は確実にとどめを刺すべく近づいた。 すると死にかけの女は、探偵に向けて――最後の言葉を告げた。 「なあ……おれはもう、死ぬ……そしたらよ……」 「犯人は、オマエだよな?」 遠藤は立ちつくした。 もちろん彼女はわかっている。これは試合だ。罪はない。 だが同時に探偵・遠藤は理解してしまっていた。これは物語なのだ。 ストーリーにおいて実際に殺人をし、犯人となる探偵。彼女にとってありえないことだ。 ――フィクション上の探偵は完璧で完全でなければならない。 遠藤終赤は切腹した。 「ヒ……ヒ……面倒臭ェもんだよ……な、プライドってやつも……よォ」 横目に切腹を見ながら、工藤がごちた。 そうプライドだ。叔父の探偵塾で学んだ本格派の一流探偵としてのプライド。 それがいつも何度も、遠藤を自死に追いやってきた。 「ヒ……」 工藤は「エンドウ」に一矢報いた快感に2秒だけ酔いしれ、満足げに笑った。 子供がゲームに勝った時のような、無邪気で屈託のない笑顔だった。 そしてその顔のまま、やがて、安らかに死んだ。 【了】 このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/206.html
次元殲滅ダイブレイズ・SS 連続SS mission1 全てを薙ぎ払いたいと願う少年 mission2 偶然に奪われた自由 DBへ SS保管庫へ
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/319.html
月帝ノ唄・SS 連続SS 其の壱「ルナとゲッテイ」 其ノ弐「スバルとホシガミ」 其ノ三「ツバキとリユウ」 其ノ四「カナシミとヨロコビ」 其ノ終「シンゲツと 」※Aパターン 其ノ五「シンゲツとトコヨ」※Bパターン 其ノ終「マモルとタメス」 DBへ SS保管庫へ
https://w.atwiki.jp/saki_nodoka/pages/32.html
●5スレ目 5-7氏 無題 (2月14日はバレンタイン。二人の少女たちはお互いに相手を想いながら……) 5-22氏 無題 (上SSの続編。チョコを巡って浮き沈みする気持ちを抱える二人) 5-113氏 無題 (上SSのさらに続編で後日談。バレンタインデーが特別な行事となり、二人は幸せを噛み締める) 5-122氏 ONE DAY番外編② 5-150 氏 無題 (可愛いもの好きの和が、今一番可愛いと思っているものは……?) 5-195氏 無題 (家電でイチャイチャする二人) 5-303氏 無題 (最近変わってきたと言われる咲。どこが変わったのか考えてみるが……) 5-316氏 無題 (上SSの続編。和との日々を経て、咲は自分が変わったことを自覚する) 5-329氏 無題 (上SSのさらに続編。マニキュアを通して伝わる二人の想い) 5-365氏 無題 (応援団長に推薦された和。すごいと思う一方で、咲は寂しさも感じはじめる) 5-379氏 無題 (上SSの続編。学ラン姿ですっかりノリノリな和に咲はドキドキしっぱなし) 5-387氏 無題 (合宿の疲れで皆が寝静まる中、和が咲にあるお願いをする) 5-410氏 無題 (上SSの続編。AAが若干ずれている? こまけぇこたぁいいんだよ!!) 5-421 422氏 無題 (ちがうよタコデリオの回し者じゃないよ) 5-442氏 無題 (本命チョコに相手がどう答えてくれるのか。そればかり心配で肝心なことを忘れている二人) 5-480 氏 無題 (久が語る、咲への想い) 5-545氏 無題 5-549氏 無題 X-XXX氏 18禁SS (上SSの続き) 5-568氏 無題 (5-545 無題の続き) 5-580氏 小ネタ集 5-586氏 無題 5-592氏 無題 (5-568 無題の続き) 5-606氏 無題 5-607氏 無題 (5-592 無題の続き) 5-614氏 無題 5-655氏 無題 5-676氏 無題(18禁) (5-607 無題の続き) 5-678,682氏 無題(18禁) (5-379 無題の続き) 5-684氏 仕分け人原村和 5-704氏 無題 5-724氏 無題 5-732氏 無題
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/127.html
第一回戦【洋館】SSその1 この世界は3次元の世界だと言われている。 縦、横、そして奥行き。 この3つの次元によって空間が成り立っている。 私たちはこの空間の世界に生きている。その空間を時間が一方向へと流れている。 (※注:この「時間」という要素も考慮した場合、 この世界を表現するのに時空という呼び方を採用することもある。 私達が日々過ごしている世界において時間は空間とは独立した次元であるため、 同じ「次元」という一要素でありながら特別扱いをされるのである) ここで誤解してはならないのだが、 「3次元であること」イコール「縦、横、奥行きで構成されている」 とは、必ずしもならない。 わかりやすい例で説明するならば、2次元を考えるとき、 「縦」と「横」で構成された平面……「画像」を考える者が多いが、 それがあなたの前に「壁」として存在するならば「縦と横」の平面であるし、 「床」として存在しているのであれば「横と奥行き」の平面である。 (※注:言うまでもないがあくまで例であり、地球が球形であることは考慮しない) 私たちの生きている空間以外の3次元の例としては、「動画」が挙げられる。 平面の画像が再生時間に沿って変化していく。巻き戻せば画像も元に戻る。 ……そこで私は考える。 もし私たちが生きているこの世界以外の世界が存在するとして―― それが、この世界とは異なる次元の組み合わせによって成り立っているとして―― それが、この世界と接するということがもしあるとすれば。 先ほどの「床」と「壁」の例で言うならば、その2つが接する部分は「線」となる。 その「線」は、2つの平面が共有する次元――「ひとつ下の次元」である。 ならば、この世界と「もうひとつの異なる3次元世界」が接する部分は。 「平面」になるのではないか。 ――ある数学系魔導書の一節より。 ダンゲロスSS3 「一回戦第七試合」 洋館。 元は安出堂という名家の所有だったらしい。 住み手がいなく持て余し気味だったその館は、 過去に七葉樹グループによって買い上げられた。 もちろん、試合会場にするなどという冒涜的な意図でなく、居住目的で。 規模こそ大きいが、七葉財閥は基本的に同族経営である。 つまりこの洋館は、七葉樹の経営者の住むところとして存在していたのだ。 現在の七葉のトップに据えられている七葉樹落葉もまた、この場所に住んでいた。 ――ごく短い間だけ。 思い出の残る場所さえも機関のために差し出す、現七葉総帥。 現在の目高機関と七葉財閥の力関係を示したわかりやすい構図の一つだ。 (――と、思いたい奴には思わせておけばいい) 本会場内に特別に設らえられた観戦室で、銀髪の少女、落葉はひとりごちた。 戦闘が始まる。 弓島由一。 参加者の中では高島平四葉と並んで最年少である彼だが、 自分こそが優勝するのだという熱意に満ちていた。 (使いどころさえ間違えなければ、オレの『ガンフォール・ガンライズ』は無敵だ) と、普段から認識している。 一対一の状態で向き合えば『転校生』のような怪物をも倒すことが可能だろう。 能力の内容は、銃弾を当てた対象にある効果を与える「特殊銃」を作るというもので、 その弾丸の効果に囚われた者は床に沈められるか空へ浮かばせられるか…… とにかく由一の意のままに上下移動をさせられてしまうのである。 さらに弾丸の発射音の大きさを極小にコントロールすることで、 防ぎようのない不意討ちが可能である……かわりに弾速が犠牲になるが。 恐ろしい性能ではあるが、由一に油断はない。 むしろ逆だった。 「ガンフォール・ガンライズ」には弱点がある。 能力の効果を解除する方法があるのだ。 (まあ、簡単にできることじゃないけどな。 念のため、一発で仕留めるようにしねえと) ちょうどそう思った時点で、洋館の正門に彼は降り立った。 会場内のどこかにランダムで参加者が飛ばされる。 それが開始の時であるという事前説明の通りに、由一はすぐに動き出す。 「こういうのは、先に相手を見つけた奴が絶対有利……! 行くぜ!」 勢いよく彼は駆け出した。 臆するところはない。気合は十分。最高の調子だった。 「これは日頃の行いがいいってことですかね、ノートン卿」 駆け出す対戦相手の姿をしっかりと視界に映しながら、相川ユキオはぼやいた。 相手の姿を早々と確認できたのは幸いだが、喜んでばかりもいられない。 裏門に現れたもう一人の対戦相手、倉敷椋鳥の姿も見えた。 現在ユキオとノートン卿がいるのは館の3階の書斎である。 挟まれる形になってしまった。 『慌てふためくな。英雄譚に苦難はつきものである―― 従者がきみのようなやつであることも含めてだが』 「いや慌ててはいませんが」 『前門の虎、後門の狼。だが我らには地の利がある』 ノートン卿は魔導書である。 戦闘には精通している(本人の弁だが)卿の状況分析は実際大したものだし、 ユキオが事前に用意した策もある。 (もっとも、その案を実行するにあたっては一悶着あった。 基本的に、ノートン卿は姑息な行為が大嫌いなのである) 「で、どうします? やりますか?」 『むろんだ。行くぞ』 ユキオとノートン卿は部屋を出る。 向かうは大広間。 隠れて残りふたりの潰し合いを待つという選択肢は端から放棄して、 魔導書と編集者は進軍を開始した。 倉敷椋鳥は他の二人とは違い、隠れる案を採るかどうかを直前まで決めかねていた。 椋鳥の召喚能力はまさにそのような戦術にはうってつけである。 ……が、結局のところ攻め手に回ることにした。 (いちいち考えるのは面倒だ) 隠れるのは結局は保身のためである。 そして、椋鳥はここ5年間そのような思考とは無縁だった。 守りたいと思うようなものは彼にはない。 それは自分の身の安全とて例外ではないのである。 この大会においても、椋鳥は惰性でそのような思考に流れたのだった。 もっとも、椋鳥がどちらの選択をしようと意味はなかっただろう。 館に入った椋鳥はすぐに直面する。 「うわああああああ!」 「助けてくれええええ!」 「見逃してくれ! 頼む!」 「うおおおお! 死にたくない!」 ――そこにいたのは人間の群れだった。 恐慌をきたしたように叫びながら、出口へ……つまり、椋鳥のほうへと殺到してくる。 椋鳥の表情が固まった。 解説席。 実況と解説担当の少女たち二人もまた、そろって同じ表情で固まっていた。 「え、えー……と、これは?」 実況担当のほうが困惑する。 口々にわめきながら殺到するそいつらは、一様に同じ格好である。 全て同じ服……安物のシャツとボトムス。 背格好はバラバラだった。共通するのは全てが若い男性だということぐらい。 解説担当のほうの少女が叫んだ。 「ひ、人の群れです! 全て相川選手と同じ洋服の!」 これが相川ユキオの用意した小細工その一である。 『携帯する城塞』ノートン卿は、 その能力を最大展開すれば一個師団を収容できるほどの城塞と化す。 これを利用し、ユキオは百人規模の人間を会場内へと持ち込んだ。 「……これ、ありなのかしら?」 「え? それは……どうなんでしょう?」 実況担当のほうの少女のつぶやきに、解説担当のほうが首をかしげる。 困ったように視線を審判のほうに向ける。 ――と。 「……問題ない。進行を続けて」 いつの間にか隣の特別観戦室から入ってきていた七葉樹落葉が断じた。 当然、秘書の森田も同行している。 「……い、いいんですかー?」 「ええ、仕方ない。彼らが戦力として雇われていて、 試合に参加するというなら話は別だけど…… 今の段階ではルールには抵触していない。微妙なラインだけどね」 「わ、わかりました!」 反則行為ではないという旨のアナウンスをする実況担当。 もちろん、大会における禁止事項に抵触しない場合でも、 大会運営者が著しい悪徳行為と判断した場合は選手を退場させることはできる。 しかし落葉はそうしない。 可能な限り参加者の実力を測りたいという思惑。 微妙な裁定で参加者を退場させた場合、 大会運営そのものに批判が殺到するかもしれないという危険を回避するための選択。 そういった考えとは別に、落葉はこうも思っていた…… 作戦も強さの一つ。 そしてまた、ユキオの敵が真の強者ならば、この程度はものともしないだろうと。 ――そうでなければ、落葉の目的には必要がない。 椋鳥と時を同じくして由一もそれらに遭遇した。 思考は固まったが身体は動いていた……咄嗟に大きく横に避ける。 はたして人の群れは由一にはちょっかいをかけることなく我先に出口へとなだれ込む。 「なんだってんだ、くそっ!」 毒づく。 館の入り口は狭く、ホールはなかなか外へ出られない一般人でいっぱいになった。 由一は警戒する。 これは「木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中」の格言の通りの作戦だ。 どうせ選手同士は初対面であるため、巧妙な偽装は必要ない。 戸惑えばその隙に相川ユキオが襲いかかってくるだろう。 『ガンフォール・ガンライズ』で全部地面に沈めてしまう手もあったが、 それには時間がかかる。 撃っている間に暴徒と化した男たちに襲われる可能性もあったし、 何よりまだ姿の見えない相手に手の内をさらすことは避けたかった。 由一は耐え続けた。 (思ったより辛抱強いですね、あいつ) 『もちろん、予測の範囲内だ』 魔導書とその編集者は声を介さずとも意思の疎通が可能だ。 ユキオとノートン卿は由一の様子を眺める。 ……ガキだけど、馬鹿ではないな。 ユキオは直感した。 古本屋としては末端のバイト以下の品性しか持ち合わせない彼だが、 人の器のデカさを量るのは得意だ。 数ある魔導書の中からノートン卿を手にしたのもその選定眼ゆえである。 『だから私は反対したのだ。やるなら徹底すべきだろう。 あの者たちを兵士に仕立て上げて使えばよかったのだ」 (――そんなことをしたら、一発で退場させられちまいますよ) ノートン卿には伝えないように、脳内でぼやく。 彼らにはカネを握らせ、ただひたすらパニックを装いつつ、 できるだけ時間をかけながら会場から脱出しろと言い含めてある。 ねらいはあくまで撹乱であり、ある程度の成果はあったが。 それだけでは弓島由一の底を引きずり出すことはできなかったということだ。 第二段階に入る必要がある。 そう判断し動き出そうとしたその時―― ノートン卿が。 ぶるり、とふるえた。 『この――神格は』 (あ? ……なんですって?) 『《天使》――』 言葉が終わる前に。 エントランスホールの壁に穴が開いた。 そこから出てきたものは。 「どうも、空飛ぶスパゲッティ・モンスターです」 楕円形の胴体から、かたつむりのように目玉がにょきっと生えていて。 うねうねとした触手を伸ばしながら浮遊する、異形の存在がそこにいた。 その体には厚みがない。 正面から見ると、どことなくカニに似ていた。 触手の一本で倉敷椋鳥を持ち運んでいる。 椋鳥はわけがわからない、という表情だ。 「何だあれ」 由一がその場の全員の疑問を代弁するのが聞こえる。 「私は5000年前に世界を創造した者です。 お隣の世界からこの方のおかげでこちらへ来ることができました。 この世界の皆さんはまことに素晴らしい。 私の世界は、作る時に空気を入れ忘れたので、みんな平たいのです」 『おのれ、やはりあの男……』 オレイン卿の力の汚染を受けている――! ユキオは思念とともにノートン卿の憤怒と嫌悪の感情が流れ込んでくるのを感じた。 ――空飛ぶスパゲッティ・モンスター。 「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」という宗教において、 それは造物主に設定されている。 それは大酒を飲んだ後に宇宙を作った。 その身からヌードル触手を伸ばす。 ……スパゲッティ・モンスター教は、「知性ある存在が宇宙を作った」とする説を 進化論と同列に扱って学校で教えようとする者たちをおちょくるために作られた。 つまりは一種のジョークである。 スパゲッティ・モンスター教は他者へいかなる信仰も強要しない。 スパゲッティ・モンスター神が存在しないという明確な証拠さえ提示されるのであれば、 スパゲッティ・モンスター神が存在しないという事さえ否定しない。 いまのところそのような証拠は提出されていない(当たり前だが)。 椋鳥は、しかしわけのわからないこの存在を呼び出してしまったのだった。 ――おそらくは、相川ユキオの格好をした男が大量に押し寄せてくるという、 非常にカオスな状況に困惑したことで、このようなことになってしまったのだろう。 咄嗟に異世界への『ゲート』を開き、手近にあった柱時計を蹴り倒したことが、 このような混沌を招いてしまうとは、全く予想できなかった。 「ぜひ皆さんを私の世界へ招待したいと思います。 こちらの方だけは招待するわけにはいかないようですが」 召喚の能力の使用者である椋鳥は、 この世界に空飛ぶスパゲッティ・モンスターを繋ぎ止める楔である。 それ以外の者に向けて、スパゲッティ・モンスターはヌードル触手を伸ばし始めた。 当然、最初に餌食になるのは相川ユキオが連れてきた、力を持たない人間たちである。 「うわあああああああああああ!」 「たっ、たすっ、助けてくれえええ!」 「こ、こんなの聞いてないぞ! 見逃してくれ!」 「ひ、ひいっ! し、死にたくないっ! 死に……うわあああああ!」 今度は演技でも何でもなく叫びながら逃げようとする彼らは、 無数のヌードル触手にあっさりと捕らえられる。 「……ふむ、とりあえず私の口の中にしまっておきましょう」 そして、エントランスホールは無人となった。 相川ユキオの姿も、弓島由一の姿もない。 倉敷椋鳥だけが残っていた。 『――などという結末が許されるか? ユキオ』 「言うまでもないでしょ?」 ノートン卿を手にした『編集者』として。 このようなわけのわからないままに物語を締めくくるわけにはいかない。 隣室で、ユキオは決意を固めた。 「しかし、どうしますかね。あれこれ武器は調達しましたけど……」 影でコーティングして不意討ちをするための小型拳銃。 あるいは手りゅう弾。火炎放射機。チェーンソー。ボウガン。斧。スタンガン。 ユキオの用意した小細工その2だが。 『ヤツには通用しない。狙うなら“本体”だが……』 「銃じゃ無理ですよ。あの本数の触手……」 「おやおやこちらでしたか」 ノートン卿との交信の最中に声をかけられ、ユキオは飛び上がった。 「怖がることはありません。こちらの世界も素晴らしいですが、 私の世界も、きっと気に入ってもらえると思います」 ヌードル触手が伸びる。 影の城塞も槍も、その量に押され、絡め取られる。 敵わない―― ユキオとノートン卿に魔手が届く、その直前。 ――銃声が空間を切り裂いた。 「むむっ、いったいなんでしょうか?」 疑問を呈する空飛ぶスパゲッティ・モンスター。 ダメージを受けた様子はない……が、その身体がどんどん浮き上がり始める。 たちまち天井をすり抜け、空飛ぶスパゲッティ・モンスターは消えた。 椋鳥は天井をすり抜けることはなく、触手から解放される。 「――デカいわりに軽くて助かったぜ」 そこにいたのは銃を構えた少年――弓島由一。 それを見るなり椋鳥は頭を切り替え、跳んだ。 ユキオとノートン卿も同様。 遮蔽物の影に身を隠し、銃弾を回避する。 (そんなその場しのぎは……オレの『ガンフォール・ガンライズ』には通用しねえ!) 由一がまず狙うのは椋鳥のほうだ。 小細工を弄してきたユキオは実力のほうは大したことがないと判断し、 椋鳥へと連続で発砲する。 棚が。 机が。 姿見が。 椋鳥が盾にした物は全て、床をすり抜けて沈む。 「くっ! こいつの能力……『銃弾を当てた物を移動させる力』か!」 椋鳥が吐き捨てるのが聞こえる。 身を隠すための盾はあっという間に尽きた。 (出し惜しみは――) とどめの一撃を放つべく、由一は引き金を引く。 (――しない!) 爆音とともに、超高速で特殊弾が射出される。 「ガンフォール・ガンライズ」は、発射音を大きくすればするほど弾速が上がるのだ。 椋鳥がいくら人生経験を積んでいようが―― (時速100キロメートルを超える弾丸の連射をこの距離で避け続けることなど――できない!) 弾丸が命中した。 特殊弾には破壊力はない……が、命中すればその対象は無力化されたも同然である。 先ほどの触手の化け物と同じように。 ――終わりだ。 そう確信した次の瞬間。 椋鳥の足下に落ちた影から、数本の槍が伸びるのが見えた。 椋鳥がくし刺しになる。 訝しんでいるゆとりはなかった。 「ぐっ!?」 焼けるような痛みと、とてつもない冷たさの、喪失感。 由一の胸から黒い槍が生え、顔の前まで飛び出しているのが見えた。 「いやいや、ご苦労さん。助かったぜ」 絶命した弓島由一に、無傷のユキオはねぎらいの言葉をかけた。 『携帯する城塞』――ノートン卿の真骨頂。 地形と同化し、この洋館そのものを城塞化したのだ。 ……そして。 堅牢な城塞の攻略手段の一つに、少数の人間に手引きをさせるというものがある。 しかしノートン卿にはその手段は通用しない…… 城塞内部には、最強の迎撃システムが敷かれているのだ。 『ウォール・ファイア』と呼ばれるそれは、敵を識別し、容赦なく貫く。 難点は地形との同化には時間とエネルギーを食うことだが―― 『言っただろうユキオ。――“我らには地の利がある”と』 「……まったく、ノートン卿の偉大さには恐れ入りますよ」 ユキオは手放しでノートン卿を称賛した。 「しかしこいつ、いい能力を持ってるな。 ノートン卿、こいつを従者にしたらどうです?」 『……気を抜くな愚か者め。まだ終わってはいないぞ』 「わかってますよ。わざと急所は外したんですから」 ユキオは影溜まりで倒れ伏す椋鳥を見下ろす。 肝は冷えたが、ユキオとノートン卿の勝利は確定したといえるだろう。 とどめを刺さなかったのは、『尋問』する必要があるからだ。 「さて、お前には聞かなきゃいけないことがあるんだ。わかるか?」 影で貫かれた椋鳥の手足にも新たに影の槍が刺さる。 放っておけば失血で死亡するだろう。 「わかってるとは思うが、少しでも変な動きを見せたらすぐ死ぬことになるぜ」 「ぐ、ぐぐ……」 「それにお前にも得になる話だ。 答えれば『オレイン卿』の精神汚染、解除してやるよ」 「何……?」 痛苦にあえぐ椋鳥の声に疑問の色を感じ取り、ユキオは眉を寄せる。 「あー……自覚はないか。だが何か覚えはないか? 人間の精神を操り、《天使》を扱う魔導書。 そいつは人じゃない何かを装って人間を利用する、最悪だ」 「人じゃない、何か……」 椋鳥の声が変わる。 ぼそぼそと呟くような声。 (――体力の限界か?) 椋鳥が喋る……が、ユキオは聞き逃した。 「悪い、聞こえなかった。もう一回言ってくれるか?」 二歩だけ椋鳥に近づく。 必要以上に接近するのは危険だ。 椋鳥のほうも一度咳きこんで、いくらかマシな声で言い直してきた。 「……あんたが言う《天使》ってのの意味はわからないが、 人じゃない何かっていうのには、心当たりが……ある」 椋鳥はまた咳きこんだ。血を吐きだして、続ける。 「俺の能力は、違う世界のなにかを呼び出す能力……だ。 代償に、何かこちらの世界のものを、『ゲート』に入れる必要が、ある。 何が出てくるのかは俺にもわからないし、制御できないこともある。 だが……『魔導書』なんてものに関係があるとは思えない」 「どうかな。それだけか?」 「あとは……そうだな。箱根で、俺は幽霊に会った」 『――幽霊だと?』 ノートン卿が反応するのをユキオは感じる。 椋鳥にはその声は聞こえない。 「それで?」 仕方なくユキオが先を促す。 だが返ってきたのは、独り言のような呟きだった。 「――そいつが、俺を操っているというのか? だが、あいつは俺と同じ姓を名乗った…… 『魔導書』とやらが、俺のことを調べたというのか」 ユキオは舌打ちした。 「ちっ……これ以上話しても無駄か。悪いが、終わりだ」 「――そうだな」 静かな声だった。 一瞬、椋鳥以外の人物が発したのかと思ってしまうほどの。 「……あ?」 そして衝撃が走り、ユキオの意識は闇に飲みこまれた。 椋鳥はふらつきながら立ち上がった。 負傷が酷い。 早く処置しなければ手遅れになるだろう。 とりあえず一番酷い胸の傷を手で押さえて止血をしようとする。 床は酷い有様だった。 ユキオの身体の破片が飛び散っている。 凶行の主は天井を突き破って落下した「柱時計」だった。 それもまた粉々に砕けている…… 椋鳥が空飛ぶスパゲッティ・モンスターを呼び出す際に使用した物だ。 椋鳥の能力が解除された時、 柱時計は空飛ぶスパゲッティ・モンスターと入れ替わるように戻ってきた。 能力が解除された理由はわからないが、 空飛ぶスパゲッティ・モンスターが上空1キロメートル地点を突破したか、 空飛ぶスパゲッティ・モンスターが酸欠か高所恐怖症かで気絶したか、そんなところだろう。 能力が解除されたのを感じ取った椋鳥は、 勝利を確信したユキオを、喋り声の大きさを調節することで誘導した。 ――「落下点」へと。 もちろん、いくら柱時計がしっかりした材質の物体だとはいえ、 空気抵抗や風の流れ、落下中の回転の仕方、 洋館の屋根への激突の仕方によっては落下点はまるで変わってくる。 博打と呼ぶのもおこがましいほどの、薄い確率。 ユキオの敗因は一つ。不運だった――その一言に尽きる。 あるいはそれも、魔導書を持つ者に降りかかる「災い」だったのかもしれない。 (精神汚染――ね) 椋鳥はユキオの言葉を思い返す。 自分が操られているのかどうかはわからない。 しかしたしかに『汚染』はされているだろう―― 人と接し、影響を受けること……それを汚染と呼ぶのなら。 (それを言うなら俺はもう手遅れだよ。核が落ちた日からな) 汚染というなら、椋鳥の精神はすでに真っ黒に染まっているのだろう。 そして、それは何も椋鳥に限った話ではあるまい。 関西滅亡。東京への核攻撃。新黒死病の蔓延。 どれもこれも、人の心に深い傷を残すのには十分だ。十分すぎる。 その傷は。あるいは汚染は。いつか拭い去られるのだろうか? 椋鳥は目を閉じた。 一回戦終了。 このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/379.html
すあまのキモチ・SS 単発 ストーリーライン 最終話 DBへ SS保管庫へ戻る
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/
ふたば系のゆっくりSS保管庫だよ! ゆっくりしていってね! いじめが多いけど、愛で 虐待 ギャグ カオスなんでも保管しちゃうよ! ここは保管餡庫の保管庫という感じです。もっと探しやすく読みやすくなればなーとの思いから作られました ここは来るモノは拒まずのヤリまむ精神でなんでも保管しちゃうので、時々トンデモな作品もあると思うけどそこは自己責任でよろしくね! 餡娘ちゃんの所ではされていない挿絵保存もとりあえずやってみました。賛否両論なご意見お待ちしてます 【お知らせ】 ★★ゆっくりスレが『JUN』から『二次元グロ裏』に移転しました★★ ※虹覧では隠し板になっている為、一度『IMG』・『DAT』に移動すると『グロ裏』が現れます 【更新履歴】 10/08/02 20作品を保管 09/10/27 Wiki公開。09/10/19までの作品を保管完了 【当サイトの作品について】 実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません 犯罪を教唆するものではありません 当サイト内の創作物の文章・画像などを無断改編、複写、複製、転載、公開するのは固く禁じさせていただきます 必ず個人趣味範囲内でのご利用をお願い致します 【免責事項】 当サイトのご利用によって、あなたにいかなるトラブルが発生しても 当方は一切責任をおいません ご利用は自己責任において行って下さい 【叱咤激励提案報告とか色々】 お名前 おコメント すべてのコメントを見る まりさつむりゆっくりにっきに出てこないかな? -- (鬼威惨のリーダー) 2021-11-23 16 57 46 ここの小説ほんとに面白いのばかりでいつも使わせて頂いてますー!これからも使うと思うので是非よろしくお願いします ((○| ̄|_ -- (ゆゆゆ!ゆっくりしていってねー) 2021-09-26 07 47 31 ゆ虐するやつ 消えろ わかるだろ 虐待されたゆっくりを見て可哀想だとも思わないのかよ ふざけるな なぜ貴方たちはゆっくりを虐待する! なぜ貴方たちはゆっくりを守ろうとしない! -- (は?) 2021-09-24 20 29 07 ゆっくり虐める人しんでくれ -- (ゆ虐派皆殺しにしてぇ...) 2021-09-24 19 25 04 ゆっくりの意思尊重してあげたら?何で赤ゆっくりは焼かれるの? 新しい命踏みつけにしてあなたは楽しいの? -- (シークレット) 2021-09-22 18 27 40 ゆゆっ -- (名無しさん) 2021-09-13 16 19 22 自分の問題と向き合え(キリッ!) ファーーーーwww -- (名無しさん) 2021-09-09 11 03 28 ↓↓うるせぇゲェジ!w なんでお前らに気を使わなきゃいけねぇんだよwww 喚いてりゃ言う事聞いてくれると思ってんのか?餡子脳が -- (名無しさん) 2021-07-01 23 33 31 シャイニングアサルトホッパー!!!!!!!!!!!!!!!!! -- (名無しさん) 2021-05-12 19 15 17 異常な妄想を抱いてしまう人がいるのはしょうがないにしても、それを誰もが閲覧できる環境に垂れ流すことの意味は考えろよ。検索エンジンに表示されないようにする(現状では一般的な副詞としての「ゆっくり」を検索しても検索結果に表示されてしまう)のはもちろんのこと、例えばパスワードなしには閲覧できないようにするとか、最低限のゾーニングはちゃんとやれ。それとこういうモノを喜んで見ている人は自分が病的な人間であることをしっかりと認め、なぜ自分はこんなものを見たいと思ってしまうのか、根本的なところから自分の問題と向き合え。 -- (名無しさん) 2021-03-13 09 43 56 胴付きさんとわかさぎさんはゆっくりできるのじぇ -- (名無しさん) 2021-02-26 15 32 28 昔見てて戻ってきたんですけど、シリーズもので、ゲスなゆっくりに婚約者を殺されてしまって復讐を誓ってゆっくり一家に復讐する…みたいな話のもの(記憶が曖昧なので間違っていたらすみません)がもう一度見たくて探してきますが見つかりません。どなたか作品が残っていたら教えてください。 -- (名無しさん) 2021-02-10 23 07 06 ゆへへへ!れいみゅはぐずなんだぜ! -- (名無しさん) 2021-02-06 17 52 53 編集中ssの名前だけ知っても意味がない!!!!! -- (名無しさん) 2021-02-06 17 50 35 何故饅頭 -- (無なーい) 2021-02-06 17 42 59 んほぉぉぉぉぉ かわいいまりちゃねぇぇぇぇぇ!ありすのとかいはな、てくにっくでしょうってん!!させてあげるわぁぁぁ -- (とかいは) 2020-12-14 16 19 47 もっと愛で系の話が欲しい -- (名無しさん) 2020-08-31 22 15 02 ゆっくりのひ〜まったりのひ〜 ゆゆ!まいちゃたちのことをこけにしているサイトっさんがあるのぜ。ほろびるのじぇ〜 -- (名無しさん) 2020-08-31 22 14 16 ー (#・_・)ー (゚Д゚||||||||||||||||) | | ←愛で派 | | -- (名無しさん) 2019-11-15 19 03 18 ここ凄い荒れてるな -- (名無しさん) 2019-03-30 01 46 24